2025参議院選挙の課題―2

②安全保障と国防予算―1(日米安保条の本質)

 マッドマンが日本への25%の相互関税という一方的なムチが8月1日から発動されることになった。日本経済への影響は輸出総額の15%が米国向けであることから、GDPを0.8〜1.1%下げることになると予測されている。

 それはそれで深刻と捉えるか、そんなものだったかと安堵するかは人それぞれだろうが、それでもわたしは石破首相の「安易な妥協はしない」という姿勢を評価する。石破首相、岩屋外相、赤澤特使の3人組はよくやっている。情けないのは日本のメディアの方だ。全ての局がも新聞も「困った困った」と口をそろえるだけで、トランプの無礼千万なブラフに憤るコメントは見当たらない。

ここで考えなくてはならないのは、今後とも米国を日本の安全保障の要と考えていいのかどうかだろう。少なくとも、相互関税によって日本が損失を被る分、日米同盟の合計の損失となる。「思いやり予算」などというふざけた名分でつけている在留米軍への駐留費負担額から差し引く位のことをいう政党があってもいいのだが、共産党も含めてどの党も言わないのは何故か。政治家は皆、この国が米国の植民地から脱却していないという現実を知り抜いているからだろうか。それならそれで、その本質を国民に暴露して判断を仰ぐべきだろう。

 日米安保条約の本質は日本の国防を保障するものではなく、日本を反共戦線の最前線に立たせようとするものである。降参した敵軍を新たな敵に向けて最前線に立たせるというのは用兵の基本として、洋の東西を問わずやって来た常道なのだ。米国もそれを踏襲しているだけと思っているのだろう。日本に原爆を落としたトルーマンは広島・長崎の惨状を知って「広島・長崎の獣たちを見せしめにしなければ、米国の若者がさらに100万人、戦場で命を失ったのだ」と強弁しつつも、政治家としての想像力のなかった自分を恥じ、朝鮮戦争で核使用を求めたマッカーサーを解任してまで使用を許さなかったという。

 今回の貿易交渉中にトランプはわざわざ広島・長崎への核攻撃が戦争を終わらせたのだと高言して日本人の心を逆なでした。自分のイラン攻撃を正当化するためとはいえ、彼に日本を「対等の」のパートナーなどと言う考えがないことを露呈したことになる。いざとなればいつでも相手を「獣たち」としてしまうことは、ガザの現状に対するトランプのせせら笑いを見ればわかることだ。

 幸いなことに今、「米国至上主義に立ち戻った米国世論」を背景に、日本は防衛費を増額すると同時に、在留米軍にもっと金を払えと言っている。「おっしゃる通り、日本は日本で守るから、米軍にはお引き取り頂いて結構」という腹構えが、今後の交渉には求めらるだろう。

 「そんなことを言ったって、米軍がいなくなったら、誰がこの国をも待ってくれるのだ」という意見が自民党の党是であるようだ。しかし、では本当に米国が、いや米軍が日本を守るために駐屯しているのか考えなくてはならない。ウクライナに対する米国の対応を見せつけられた上に、さらに相互関税25%を突きつけられて、まだ米国が白馬の騎士だと考える日本人はどのくらいいるのだろうか。

 大体どこの国が日本を欲しがるというのだろうか。近隣の中国、ロシア、北朝鮮がそれぞれ尖閣や大陸棚、北方四島、竹島という領土問題を抱えているとはいえ、ではこの3国は日本の仮想敵国なのだろうか。これらの領土問題は永い歴史的経緯や敗戦という要件が、交渉を複雑にしているというが、国際法の枠組みでの交渉ができないわけではない。その国際法を無視しようとしている最大の国がトランプの米国であることを、わたしたちはもっと重大に考えなくてはなるまい。

台湾有事の際には日本領土へのとばっちりがあるというが、それもまた結局、沖縄に米軍基地があるからこその危険性である。しかも、その中台対立も、戦後レジームの中で、その時々の米国のご都合主義によってもたらされたものだ。

 日本の国防予算は増大の一途を辿っている。米国はさらなる増額をせよと迫っているが、仮にそうするならば、その分、米軍のプレゼンスの縮小を主張するべきだろう。少なくともトランプの論理を逆手にとって、日米地位協定の破棄もしくは大幅な改定を要求する好機とするべきだろう。沖縄の人々をまたあの阿鼻叫喚の中に陥れることだけは金輪際やってはいけない。それだけでなく、沖縄県人の安心安全な生活のために現状を少しでも変えなくてはならないと、今度の参議院選挙でも、わたしは大きく声を上げたい。

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