管見耄言ー16.

「急いては事を仕損じる」

 今日、赤澤経済経済再生担当大臣が渡米した。しかし、とにかく今は首相の「急いては事を仕損じる」を忘れないことだ。何も慌てることではないし、首相の言う通り、慌てると事を仕損じるだけであろう。赤澤大臣は「日々刻々、日本の企業の利益が失われている」と言っているが、これまで「腹が一杯でも泣く赤ん坊」のような日本の大企業は、こんな時のために官民上げての公然たる脱税ともいうべき過剰な留保資金をため込んできたはずだ。
 2023年に総額600兆円を突破した大企業の留保資金は、中小企業の経営者の貯金とは全く性質の違うものだ。貯金ではなく、むしろ所得隠しともいうべきものだと、わたしは常々言ってきた。国の借金の約半分もの所得を公然と隠してきた大企業は今こそ、その資金でマッドマンの乱調経済の嵐が過ぎるまで、じっと我慢して乗り切ればすむことだ。どうせ、その金を傘下の関連企業救済に向けて使おうなんて殊勝な考えはないだろうが、そもそもが内部留保などというのは、わたしたちがトランプ登場を好機にして考えなければならない日本の闇の一つである。単に大企業が肥大化するだけでなく、放っておけばその太った豚を狙う餓狼の如き国際資本にどんどん株を買われてしまう。国内で借金を回しているうちはモラトリアムもデフォルトも心配しなくて済むが、借用書(国債)を所有する大企業が外国資本の傘下に入るようなことがあれば、その借用書は国外のものとなる。
 日本の借金は今のところ、その半分を日銀など政府系金融機関が引き受けている。が、残りの国債は大企業も留保資金の一部として保有している。それを外国資本が狙うということになれば、繰り返すが日本の借用証書が回り回って外国企業の手に落ちてしまうのだ。それが既に起こっているのかも知れないが。
 戦後の日本は復興から好景気、高度経済成長と続けてきた20世紀だったが、今世紀に入った途端に低迷して、世界に置いていかれそうになっている。トランプ騒ぎに動転して目を奪われることなく、わたし達は純粋に自分たちのための経済システムを現出させるために、貿易、国際金融、外交、防衛を見直していかなくてはなるまい。安全保障というのは軍備の拡張だけで手に入れることが出来るものではないということを、この際、わたし達皆んなが肝に銘じなくてはならないのだ。

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