2025参議院選挙の課題―3

③安全保障と国防予算:(核兵器禁止条約と核拡散禁止条約)

 日本の安全保障と国防を考える時、忘れてならない問題として、核兵器禁止条約と核拡散禁止条約の問題がある。日本は核拡散禁止条約の方は加盟・批准しているが、核兵器禁止条約の方は「唯一の被爆国」であるにも拘らず、被爆者団体などの要請に対しても知らん顔で通している。「米国の核の傘の下にいる恩恵を受けているのだから」というが、苦しい言い訳にすぎない。被爆国日本だからこそ、すでに加盟・批准している90カ国の先頭に立って、核廃絶を訴えなくてはならないはずだ。

 もっとも米国の植民地としての地位に甘んじている限り、国際的な信頼を得ることは難しいことではある。凶弾に斃れた安部元首相の祖父岸元首相の代までは、日本国内の米軍基地に核爆弾があったと疑われているし、沖縄が返還されるまでの沖縄の基地には間違いなく持ち込まれていた。さらに70年の日米安全保障条約改定後も、横須賀や佐世保に入港する空母には核が積まれていたという。そんな状態では「偉そうなことを言うな」と一部の国から言われても仕方がない。

 しかしだからこそ、正論は正論として「核兵器を完全に廃絶せよ」と、日本が真っ先に言わなければならないのではないか。核兵器の使用が人間世界の破滅に繋がることはすでに周知のことであるし、米露だけでも地球そのものを破壊し尽くすことが出来る核兵器を保有していることも、知っている。トランプやプーチンの登場によって、それが人類にとってどれだけ危険なことか、改めて思い知らされている。

 核拡散禁止条約は「強大な国だけが核を持つことを許される」という身勝手で、横暴極まりない主張に基づいている。しかも、その身勝手さが実質的に他の国の核兵器開発を容認することに繋がっている。既にインド、パキスタンは保有を公表しているし、イスラエルは公表していないものの、周知の事実として保有していることを隠していない。北朝鮮も既に保有している。保有を認められている5カ国の一つとはいえ、ロシアのプーチンは西側諸国に対して、ウクライナ侵略後も度々、核兵器使用の脅しを掛けている。

 使えば破滅とわかっている兵器にしがみつく国々にも呆れるが、その国々、特に一応同盟国である米国に対して、「現実肯定」「敗戦後レジュームの踏襲」を理由に盲従しているに等しい外交姿勢では、どんなに善隣外交、平和主義と唱えても国際社会の信頼を確保することは難しい。戦後レジュームからの脱却が言われるようになって久しいが、未だに脱却どころか「茹でガエル」になるのを待っているのに等しい状況だ。今度の参議院選挙では日米安保条約も地位協定も核廃絶も論点となっていないが、この国を敗戦国、米国の植民地の地位から脱却するために、そろそろ、わたしたちは声を上げ、行動しなくてならない時が来ている。

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