2025参議院選挙の課題-4

④財政と税制

国会で論戦が始まると自民党は決まって「財源論」を持ち出す。自民党が「財源、財源」と言い、立憲民主党などもそれにつられて財源に触れたりしている。しかし、わたしは財源論はやりたくない時の決まり文句でしかないと考えている。要は支出しなくてはならい事務事業の優先順位の問題であり、収入に応じた支出を考えるのは、我々個人の家計も国の財政も同じである。

マスメディアでも、政府の論調に沿った形で財政破綻の危険性や国債頼みの予算立案に警鐘を鳴らしたりしているが、そこにもわたしは胡散臭いものを感じている。財政破綻の危険性は確かにある、しかし、それは放漫財政、人気取り財政、米国への忖度財政だからこその危険性だとわたしは見ている。

自民党政府はまず、国防費を事業評価も支出に対する期待値の検証もしないまま、増額増額だ。インフラ整備についても地味なメンテナンス事業よりも、手っ取り早く金になる新規事業を志向する。農業政策も票田を念頭に自民党農林族によって政策決定してきた。同じ構造が医療、福祉、教育あらゆる分野に及んで、票にも金にもならない公害対策などは「財源がない」と消極的だし、野党からの政策提言には「財源を示さない無責任」と反論してきた。

財政について危機を叫ぶなら、今やらなくてはいけないことはもう一度きちんと事務事業評価と仕分けをして、政策の優先順位を見直すことだ。特に中国の脅威をプロパガンダに材料にして、国防予算に上限の無い状態は直ぐにでも是正しなくてはならない。自衛隊も一昔前までは来ていた衣を脱ぎ捨てて、軍服どころか鎧姿を隠さなくなっている。このまま、軍事予算を増やし続ければ強大になりすぎた自衛隊を文民統制できない日が再来することになる。

まずは福祉・医療・教育などの民生費、水道管の更新などと言った真に必要なインフラ整備費から収入(歳入)に応じた予算編成をし、間違っても民生費より国防費を優先するなどということはないようにしなければならない。

国債についても2024年現在の日本の国債発行残高は1213兆円、その内、外国が保有するのは1年以内の短期債を中心に144兆円である。確かに国の抱えている借金は途方もないものには違いない。米国の同年の国債はどうかというと28兆ドル、内日本が保有する米国債は1.1兆ドルで、1ドル145円で計算すると約160兆円である。つまり日本の保有する米国債は、日本の国債の外国による保有高よりの多いのだ。それで日本の国債のランクが2AAからAまでランクダウンしたということの背景は精査しなくてはなるまい。いずれにしても日本の国債はほとんど国内で保有されている。つまり借金はは国内問題でしかない。もちろん、それでも借金が増えることは望ましいことではないが、過去のブラジルやアルゼンチン、最近ではギリシャのような破綻の危険性はないと言える。

 税制についていえば、何も消費税全てを廃止せよとはわたしも思っていない。ベーシック・バスケット品目を非課税にするべきと言ってきた。ベーシック・バスケットとは、スーパーで消費者が優先的に買い物かごに入れるものという意味だ。主食であるコメ、生鮮食料品、、医薬品などがこの範疇に入る。もちろん、高所得者も恩恵を受けるのだが、金持ちも庶民も必要となる生活必需品の量は変わらない。高額所得者ほど消費税免除の恩恵の割合は小さいことになる。

 そもそも、我々が重税感を感じるのは、払っている税額の問題ではない。税に見合うだけの行政サービスと安心・安全を享受しているかどうかだろう。世界を見渡すと国民の収入に比較しての税負担率はルクセンブルクの84.6%は論外としても、2位フランス(69.9%)、5位イタリア(60.8%)、13位ドイツ(54%)と続いて、日本は22位で49.9%である。G7では英国とカナダの同率25位(46%)、米国の33位(32.3%と続く。米国は低いようにあるが、医療費や教育費の高さで相殺されている。セフティーネットが充実していることで有名な北欧4カ国も全て負担率は50%を超えている。もう一度言うが、税負担もまた費用対効果、コストパフォーマンスで判断しなくてはならないし、税来なすべからく国民のためのものであって、国のためではないということをもう一度、わたし達は候補者と政党の主張を見比べながら考えなくてはならないのではないだろうか。

カテゴリー: 政治・時評 パーマリンク