私的安倍晋三論(4)

一地方議員の政策提言-2(各論-1)」

総論で上げた3点を別の表現で言うとすれは、それはわたしたち自身、わたしたち国民の意識改革である。それがなくては全ては机上の空論となると、わたしは思っている。。そのことを前置きとしながら各論に入ろう。

①モラルハザードの解消

1)公平で公正な意思決定過程についての透明性の確立

それまでも日本の政策決定は国民の目に見える場でなされることはなかったが、安倍政権になるとお友達コネクション政治がはびこるとともに、政策決定過程は国民から全く見えなくなった。あまつさえ政府の報告書に嘘と改竄がまかり通るようになった。

 少なくとも全ての会議録を含めた公文書は開示されるべきであり、外交問題など直ぐには開示できない場合でも、10年とか30年とか期限を切って開示し、報告書や統計情報を改ざんした場合は、それを命じたものを処罰するよう法改正をする必要があろう。

2)歴史認識の確立と共有化

 安倍晋三元首相の国葬について反対の声が上がると、賛成論者はしきりに「死んだ人を鞭打つことをするべきではない」と言うようになった。

 この日本人の意識こそが過去の誤謬を誤謬として評価せず、国として犯した過去の過ちや失敗をなかったことにしてしまい、また同じ轍を踏ませてきたのだ。あれだけ太平洋戦争を肯定し続け、韓国民の心を逆なで続けた安倍晋三が、裏では日本の朝鮮半島への戦争犯罪を糾弾し、それを理由に信者から金を巻き上げている統一教会を、自分の権力基盤にしていたということを見ても、彼の歴史認識はご都合主義でしかなかったと糾弾しなくてはならない。

 今からでも遅くはない。自民党の政治圧力の影響を受けない専門部会を立ち上げて、国として昭和史をきちんと清算しなくてはならない。戦争を引き起こした要因、戦争中に集団ヒステリー化した国民の引き起こした多くの事案や事件はもちろんだが、戦争中の教育現場についても総括することを忘れてはならない。子どもたちを戦場に送り込みあるいは銃後の守りに駆り立てていた教員たちの、保身からくる事なかれ主義や軍部への積極的な追従と協力についてもきちんと評価を下さなくてはなるまい。

 1945年8月15日を境に、それまで使っていた教科書をGHQに言われるままに黒塗りにして授業を続けた教員たちの中にも、それまでの自分を恥じ自己批判したものは少数とは言え居た。しかし、文部省(今は文科省)や各自治体の教育委員会が公式声明で過去の過ちを認めたという話は今もって聞いたことはないが、どこかにそれがあるのだろうか。。

②公的教育費の拡大(未来への投資)

 日本も批准している児童の権利に関する条約(通称は子どもの権利条約)は子どもの生きる権利・育つ権利 (教育を受ける権利、そのために必要な生活への支援などを受ける権利)・守られる権利 ・参加する権利(意見を表現しそれが尊重される権利、自由に団体を作る権利)の4つの権利を保障することを求めている。

 しかし、日本はこの条約が発効した1994年以降も、条約の精神に反する状況を改善しようとしていないどころか、特に安倍政権の誕生以降、子どもを取り巻く環境は悪化の一途辿り、さらには大学進学の入り口にまでこぎつけることが出来ても、高額な学費とそのための奨学金という名の借金に押しつぶされる若者を生み出し続けている。子どものための公的資金出動は、建物などのハード面の整備ばかりに重きを置いて、ソフト面については自由競争の原則を盾に、子どもたちへの直接の就学支援がおろそかになっている。

 わたしは教育格差の解消こそが日本の未来を保障することになると考えている。そこでその方法として、

1)大学など高等教育機関の学費を大幅に軽減すること。

 旧国立大学は学費無料とし、私学についても国の支援割合を大幅に増やして学費軽減に結び付ける。社会人となった後でも学ぼうとする学生への社会的理解と経済的支援制度を充実させる。学費が軽減されれば競争率が上がることになるのではないかと心配するかもしれないが、悲しいかな少子化の影響で、今日の子どもの数は高度経済成長期のそれよりずっと少ない。分母が小さくなっている以上、進学競争が過熱することはそれほどの社会課題とはならない。

 大学間格差はどうであろう。これもまた首都圏や大都市圏と地方とのギャップは存在し続けるだろう。しかし、それは単に「都会の昼寝は田舎の猛勉強」的な前時代的発想でしかなくなってきている。大学間のレベル格差は20世紀に比べて小さくなり、むしろ解消しつつある。解決できていない格差の問題は大都市への一局集中によって引き起こされる他の多くの社会問題と同じで、この国の根本的な宿痾として取り組み、解決することが求められるのだ。

2)初等中等教育については、まず公立小中学校の教員の数を現在の2倍まで増員し、小学校ではクラス担任を複数性にする。中学校では教科選択制を強化する。

 全ての高校を単位制にして、それに合わせて大学入試制度を改革する。特に公立の進学校の教員の勤務評定から受け持ちの子どもの進学率・合格率をなくすことで、教員の受験対策の負担を軽減する。

③労働形態間の経済格差の解消

1)同一労働同一賃金を実現することによる真の働き方改革

 小泉政権当時に決定した「働き方改革」は実は働かせ改革であった。この働かせ改革は雇用する側のコストを大幅に削減させた。そのことによって企業は内部留保資金を飛躍的延ばすことは出来た。しかし、その見返りに貿易立国だったこの国は、国際競争力を失い、日本の給与水準は下降の一途をたどっている。

 もともと19世紀の産業革命の本質の一つに労働力の商品化ということがあった。つまり、人件費とは他の原材料と同じ製造コストと同等と捉えられ、従って安ければ安いほどいいという企業理念が働くようになった。その労働力イコール商品という考え方は、技術の習得と積み上げを軽視し、技術のそのものの改善や技術開発を労働者に期待するのではなく、特許やロイヤリティーに依存すること、労働者階級を単純労働に固定化することになったといえる。

 日本の戦後の高度経済成長期、日本の工業生産を支えたのはいやゆる熟練工を呼ばれる働き手であった。どんな技術もそうだが、特に製造現場ではその持ち場持ち場の技術を習得することへの達成感があってこそ、技術水準を高めることが出来た。

 しかし今日、雇用者側のコスト意識から正規雇用よりも非正規雇用の方が有利とする考えが定着し、非正規の臨時の労働者すぐにも製造ラインに着けるよう、習熟や熟練を必要としない製造工程を開発している。それでは単に労働者階級内の更なる階級の分断化となるだけでなく、企業の技術的な前進よりも、コスト軽減を人件費という製造原料コストによってのみ図る方向へと走らせることになるのは当然の帰結である。今日、日本の国内労働者の収入と一人当たり生産力が世界的に見て低迷しているのも、原因は掛け声だけの「働き方改革」にあった。安倍晋三のアベノミクスはそれを踏襲した。

 現在、政府のうわべの掛け声とは裏腹に、正規雇用と非正規雇用の賃金格差は倍以上の開きがある。非正規雇用者への待遇や社会保障を正規雇用と同レベルにすることで「働かせ改革」でない「真の働き方改革」に舵を切り、雇用形態の正規か非正規ということを、働く側が自らの生活スタイルや志望に合わせて選択できるものとするべきである。

2)外国人労働者処遇のパラダイムチェンジ

 どんなに言い繕ってみたところで、今日の日本の外国人労働者政策は、安い労働力の確保こそが目的である。そのことはどこの国でも同じあることが少なくとも20世紀初頭からの歴史が証明している。

 この分野でも日本は世紀遅れで、国内の人口減少からくる産業界の労働者不足に直面したことで、特に所謂3K(危険、汚い、きつい)職場への就労者が不足することへのカンフル剤として政策決定された。

 初めは外国籍の日系移民やその子弟の就労を認めるところから始まったが、やがて、就学ビザで入国してくる所謂留学生のアルバイト許可、技術習得を目的とする研修生へのビザ発給などで、なし崩し的に外国人の就労を認めてきた。留学や研修という見せかけだけの制度で、内実は全く違うことを、国・地方の行政機関だけでなく、多くの国民も知りながら黙認してきた。そのくせ、本音と建て前があることを理解しない外国人を苛酷に扱い、ついには入管施設で死亡者まで出している。

 単純労働者への差別的な扱いを見せつけながら、高度な技術や技能、経営手腕を有する外国人の定住を勧誘しても、そう簡単には外国人は騙されない。しかし、この問題はそう単純ではない。人種、宗教、本国の政情不安など外国人の抱える個人的な問題は単純ではない。今後、日本の将来を見据えた時、さらなる国際化の進展とともに、日本がさらなるグローバル経済圏の一角に繰り込まれていくことは明らかであり、外国人に労働力を期待する以上、一日も早く、外国人の子弟の初等・中等教育をどうするか、各種社会保障をどうするか議論しておく必要がある。

 その他、わたしの政策提言は以下のように続く。

④地方分権の復活(人口減少時代における社会構造の再建=医療・福祉・地域経済)

1)医療改革

2)福祉改革

3)地域経済改革・地域税制改革(消費税率の県単位化、軽減税率の導入)

4)都道府県・市町村制度の見直し

⑤安全保障

1)農業を中心とした食料安全保障=環境安全保障、水資源の保全と窒素過多による環境汚染防止

2)エネルギー安全保障(原子力政策・一日も早い脱原子力)

3)独自外交

4)防衛大綱の見直し(専守防衛の堅持) 軍隊というものは自らの存在感を自覚するために戦争をやりたくなる。

⑥金融構造改革(金余り経済の立て直し、官製相場形成=一億総ばくち打ちの是正)

1)公的基金を使っての株式相場支えの是正

2)日銀で買い上げた国債の取り扱い

⑦インフラ整備のパラダイムチェンジ(公共交通機関、電力、通信システムetc.)

1)鉄道網の再編成(都市型・近郊型・都市間型、上下分離方式、JR株式の取り扱い)

2)都市内のバス輸送システムの再編成、新しいモビリティーの創生

3)電力

4)通信システム

5)上下水道

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