中国のパンダ外交の行方
中国のパンダ大使の活動が活発化している。現在、地球上に2621頭のパンダが確認されている。内、野生のパンダは1864頭、もちろん中国本土もごく限られた地域にしか生息していない。飼育下にあるパンダの数は中国に700頭、残りわずか57頭が世界17カ国で飼育されているという訳だ。
中国以外の国が自国で生きたパンダを見るためには3つの条件がある。1.何より中国の指導部と仲が良くなくてはならない。2.次にレンタル料を年間95万ドル払わなくてはならない。3.パンダ大使館(飼育のための施設)の建設費用は派遣された側が負うことになる。餌の確保も特に欧米やロシアには竹が自生していないため、パンダ大使館への食料調達の費用は相当に嵩むことになる。
中国のパンダ外交は近年、一帯一路の政策と共に新興国にも広がりを見せ始めている。シンガポール、マレーシア、インドネシアから中東のカタールにもパンダ大使は派遣されている。その一方で、パンダ大使がペルソナ・ノングラータになってレンタル契約の切れる前に返還となった国もある。カナダ、英国に続いて昨年はフィンランドも契約期間を8年残して返還した。フィンランドの場合、飼育者建設にかかった費用は約800万ユーロ、年間のレンタル料95万ユーロとい、飼育費が150万ユーロもかかっていたそうだ。そりゃそうだろう。餌の竹は全てオランダから空輸していたのだから。
パンダ外交は1941年の蒋介石による米国ニューヨークへの提供に始まる。日中戦争への米国のコミットを期待してのことだったが効果は絶大だったようだ。
しかし今、米中間の雲行きを反映して、ワシントンとメンフィスのパンダ大使は本国に召還され、パンダ大使館は閉鎖されたままだった。ところが昨年、カリフォルニア州サンディエゴにひとつがいが派遣され、カルフォルニアには新たにパンダ大使館が開設されている。現在、相互間前をめぐる米中チキンレースが世界中から迷惑がられているが、パンダ外交は別のようだ。さすがに中国は強かである。