詩集「八月の青い空」熱い氷河期

熱い氷河期

地球に熱い雪が降る

熱い紙幣の雪が降り注ぐ

都市を埋め尽くし

平野を埋め尽くし

山々を覆い隠して降り積もる

魔女狩りだ 魔女狩りだと

悪魔は叫び声をあげながら

なおも

紙幣の雪を降らせる

都市を埋め尽くし

平野を埋め尽くし

その都市にも平野にも

山々にも海にさえも

悪魔は自分の呪われた名前を刻む

人々は

空から舞い降りてくる

紙幣の雪に浮かれ舞い踊る

人々は足を取られ

身動きを奪われ

それでもうれしそうに

笑いながら紙幣に埋もれて

息も出来なくなっていく

やがて札束の氷河が流れ出し

都市に押し寄せ

家を押しつぶし

地球を紙幣で覆いつくすだろう

次の間氷期

溶け出した札束の氷塊の中

化石となった人々が

それでも笑い顔のまま出土するのだろうか

                        2020年1月 心象222号

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