5.ジュラシックパーク博物館「福井県立恐竜博物館・勝山市」

 福井市での一泊は、旅の疲れが出たのか、それとも福井の美味い肴の誘惑にも負けず「黒龍」と言う地酒1合だけで我慢したせいかぐっすりと眠れました。本当は長年訪ねたくて仕方のなかった恐竜博物館に行けることがうれしくて、遠足の前夜の小学生のように眠れないんではないかと思っていたのですが。

福井駅前でわたしたちを迎えてくれる恐竜たちは6600万年前、この地を闊歩していました。

 JRの福井駅前の広場に恐竜がいることは有名です。今から向かう勝山市で新種の恐竜の非常に状態の良い化石が3種類も発見されたのですが、それを記念して恐竜博物館が建設されました。3種の恐竜たちも復元されて北陸新幹線の新駅建設中の福井駅前で、大きな体を動かしたり、時々は叫び声を上げたりしています。松平忠直卿の縁で大分市と関係の深い福井市ですから、わたしも何度もこの地を訪れていますが、さすがに30キロ以上も離れたところにある恐竜博物館はこれまで行っていませんでした。駅前のこちらは何度も訪れるたびに見慣れた恐竜たちに見送られながら出発です。

 ゆっくり走っても40分ほどで着きました。夏休み中ですから子どもたちを含めて大変な混雑です。しかし、中に入ってその展示物の豊富さ、レベルの高さ、リアルさに周りの喧騒など気にならなくなりました。この博物館を含む一帯は恐竜公園となっていて、その一角から化石が大量に、それもとても良い状態で発見されたというわけです。我らがフクイラプトル、フクイサウルス、フクイチタンの3種の恐竜たちもここで発見されています。

フクイサウルスの全身骨格
フクイラプトルの復元図

    東尋坊は約1,200 ~ 1,300万年前の新生代第三紀の火山活動によって形成された景観でしたが、こちらの恐竜たちはさらにぐっと遡って中世代の白亜紀、つまり1億4千5百万年前から6千6百万年前にここで暮らしていたのです。ところで大ヒットしたジュラシックパークという映画では、チラノザウルスやブロントザウルスといったおなじみの恐竜たちが登場していましたが、実はジュラ紀は2億年前から白亜紀の始まるまでの時期で、わたしたちになじみのある恐竜たちはまだ登場していなかったんです。そのジュラ紀の恐竜の化石も福井で発見されておりフクイベナトールと名付けられています。フクイベナトールは体長2.5メートルほど、体重も25キロくらいの比較的小型の恐竜だったようです。白亜紀に生息していた恐竜たちはそれに比べて随分と大きく、それぞれ体重数百キロから数トンもありました。

    わたしはどうせ日本列島なんて地球の皺の上の儚い大地でしかないと卑下してきたんですが、そうではなかったことがつい最近になってわかり始めたというわけです。福井県だけでなく北海道のむかわ町でも昨年になって、7千万年前に生息していた草食恐竜の全身の化石が発見されてムカワリュウ(学名はカムイサウルス)と名付けられています。白亜紀の日本列島はローラシア大陸の東の海岸地帯にあたっていたそうです。当時の日本列島の位置していた場所は、恐竜たちの繁栄に適した温暖で湿潤な環境だったことが分かっています。数千万年という気の遠くなるような時を隔てているとはいえ、このわたしたちの暮らす大地を恐竜たちが闊歩していた思うだけでロマンを感じ楽しくなります。

中生代の恐竜の中ではわたしの一番好きなのがこのトリケラトプスです。子どもたちはやはり地らのザウルスが好きなようですが。あまりにリアルだし、チラノは大きいので小さな子どもたちは怖がっていました。ここの復元モデルは本物のように迫力ある動きをします。

    ところがその6千6百万年前、ジュラ紀と新生代の境目に地球ではとんでもない悲劇が起こっています。突然、地球上にいたすべての生物種の約7割、現存していた生物たちの98%までが絶滅したとされています。もちろん恐竜たちは全て死に絶え、ヘビやトカゲ、カメといった小型の爬虫類だけが細々と現代に生き残ってきました。その悲劇の原因は諸説あったのですが、今では直径約10〜15キロメートルの小惑星が地球に衝突したからというのが最も有力な説になっています。メキシコのユカタン半島で発見されたチクシュルーブ・クレーターと呼ばれる場所がその隕石の落下の跡だそうです。小惑星の衝突とその衝撃波によって引き起こされた地球全体を嘗め尽くした爆発的な火災、さらに衝突の衝撃で巻き上げられた塵埃が太陽の光を遮ることで気温を低下させ、地球規模の急激な気候変動を引き起こし、それが大量絶滅につながったというのです。

トリケラトプスの化石(

    夏のひと時、子どもたちの歓声とともににこやかに見学している多くの家族連れの姿を見ながら、この化石達が遭遇した6千6百万年前の地獄絵図を想像して、わたしは不覚にも寒気を感じてしまいました。

トリケラトプスと言えば現代ならばサイでしょうか。大きな角はありますが、どちらも草食です。
カテゴリー: 想い出の歴史紀行 (一乗谷から会津若松まで) パーマリンク